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■Column 【 ブラックスーツ:その1 】
今回からは、ここ数年で急激に普及した『 ブラックスーツ 』についてお話します。
一昔前までは、日本でも「 ブラックスーツ=フォーマルウェア 」という認識でした。
現在でも、海外ではごく一部を除きネイビーとグレーがスーツの基本色で、黒色のスーツがビジネスシーンで着用されることはほぼありません。
しかし近年では、ブラックスーツがビジネスシーンで着用されるという日本独特の現象が起こっています。
第1回目となる今回は、日本でブラックスーツが普及した背景について考えてみます。 |
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ここ数年、日本ではブラックスーツが大人気です。
現在のリクルートスーツは、大半がブラックスーツだとも聞きます。
思えば、私が就職活動をしていた十数年前は、リクルートスーツ(この言葉自体、日本特有のものですが…)といえば
8割の方がネイビー、残り2割の方がグレーを着ていたような記憶があります。
その頃の雑誌を読み返してみても、黒に近い『 ダークネイビー 』とか『 チャコールグレー 』はありますが
やはり『 ブラックスーツ 』という言葉は見当たりませんでした。
先日、私の同級生がスーツオーダーにきてくれた時の注文も「 ブラックスーツ 」でしたが
上司から「 取引先に謝罪に行ったりする時のためにブラックスーツを持っておけ。 」と言われたからだそうです。
西洋では「 かしこまったフォーマル・もしくは遊び着 」と認知されている黒いスーツを
誰でも知っているような有名企業の上司が「 ビジネスでの謝罪の場面に着ていくのに相応しいスーツ 」と捉えているということに
私はビックリすると同時に、日本でのビジネススーツとしてのブラックスーツがそこまで浸透していることを改めて実感させられました。
現在でもイギリスやイタリアでは、ビジネススーツといえば基本的に『 ネイビー 』か『 グレー 』しかありえません。
( ちなみに西洋では、モード服はカジュアルなパーティーで着るものか遊び着という認識です。 )
なのに、なぜ日本ではこんなにブラックスーツが人気なのでしょうか?
簡単に推測しますと、古来より布を黒に染めることは難しく、また黒に染めるために使う染料の原料自体が希少だったため
黒を用いた衣服は、様々な国で王侯貴族のような身分の人しか身に纏うことのできない高級品で、一般市民には縁の無いものでした。
そういった歴史背景もあり、黒い生地はフォーマルウェアぐらいでしか用いられることはありませんでした。 |
ところが、1970年代まではモードの世界でもほぼ使用されていなかった黒が
『 パリコレ 』などで徐々に採用されるようになり
ストリートファッションでも『 パンクスタイル 』などに用いられるようになります。
また、1980年代前半に『 コムデギャルソン 』と『 ヨウジヤマモト 』が
全身黒ずくめのコーディネートを多用し華々しくパリコレにデビューして以降
日本でも一世を風靡した『 カラス族 』など、それまでは日常着としてはあまり使われていなかった黒が
カジュアル服の色として定着し
『 ディオール 』や『 グッチ 』などのモードブランドに憧れる(た)世代が多く、
普段から黒い服を着ることが当たり前になった今の日本では
黒いスーツを仕事着として好んで着ることが一般的になったのでしょう。 |
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| また、その裏ではアパレルメーカーやファッション雑誌の思惑も大いに関係していたと思います。 |
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実際に販売する側としては
・ 汚れが目立たない
・ ネクタイやシャツを選ばない
・ 冠婚葬祭兼用に使える
・ 実際の体型よりも引き締まってスリムに見える
など、消費者の方にとっては魅力的に感じる売り文句をいくらでもつけ加えられますので
様々な濃淡の違いがあるネイビーやグレーよりも、非常に売りやすい商品だと言えます
また、社会人になるまでスーツを着る機会が非常に少ない日本の多くの方は、
西洋の方に比べてスーツの着こなしに対する基本的な知識に乏しいうえに
好奇心の高さと相まって、メーカーや雑誌が発信する情報を鵜呑みにしてしまいがちで
流行に流されやすい傾向があります。
そして一度流行ってしまえば、『 他人と一緒・似ている 』ということに安心感を覚える国民性が強い日本人には
「 今はほとんどの方がブラックスーツですよ! 」というセールストークを使えば、
(言葉は悪いですが)比較的簡単に購入してもらえますので
現在では、完全に日常のビジネスシーンに浸透した感があります。 |
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「 どんな商品だろうが、数多く売れさえすればいい 」という日本型資本主義からすると、こういった企業や販売員の姿勢は仕方がないことかもしれませんが…。
蛇足ですが以前読んだ本で、うつ病などの精神疾患にかかっている方にカウンセリングを行なうと
日本人では「 他人と自分が違っていることが不安 」という方が多く
フランス人では「 他人と自分が似ていることが耐えられない 」という方が多いそうです。
こういったところからも国民性の違いが伺えます。
以上のことから、ブラックのビジネススーツはファッションの変遷・メーカーの思惑・日本人の国民性などの要素が
複雑に絡み合ったからこそ普及したものと言えるでしょう。 |
| <MORI> |
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