忘れもしない、あれは1月5日の出来事でした。お昼の12時半過ぎ、お店の自動ドアが開きました。
『インターネットで見たんですけど、スーツを作っていただきたいなぁと思って』
『どうもありがとうございます!』
見た感じ、私と同年代くらいのお客様でした。自分と近い年齢のお客様と接するときは、いつも以上にテンションが高くなっちゃうんですよね。
今回ご紹介させていただくT様は私服がとてもオシャレ!強めのライン入りのジャケットに極細のナロータイ、綺麗なダブルカフスのドレスシャツ、そしてかなりモードテイストなカマーバンド、タイトシルエットのジーンズといった感じ。他にも細かいオシャレアイテムがちらほら。なにか海外のコレクションを彷彿とさせるような素敵な私服姿でした。(きっと私が着ても似合わないんだろうな〜) とまぁ、T様の第一印象は本当にこんな感じでした。
さて、まずは生地のご希望を伺うことに。お色はブラックをご希望で、さりげない控えめなストライプが入っているもの、ということでした。私のおすすめはシャドーストライプだったので、それを含めいろいろな生地を見てもらいました。T様はかなりの種類の生地をご覧になり、その中でイタリアのチェルッティという銘柄のシャドーストライプが一番気に入ったようでした。しかし!その生地は品切れになっているというまさかの展開。とりあえずセンターに在庫がないことはわかっているので、他を探すしかない!ということで、いろいろあーだこーだやっていると岡山にあったんです!ひとつだけ!(ふー、よかった) T様はこのチェルッティの生地のストライプが、若干不規則気味に入っているところに惚れてしまったようでした。(写真)
こんな具合で生地は決まったのですが、ここまでで所要時間は約1時間。ちょっと気にする私。
『今日はお時間のほうはだいじょうぶですか?』
『あ、だいじょぶですよ! たぶん…』
(たぶん?だいじょぶって言ってるけど、お連れの方もいらっしゃるしあまりだらだらやってちゃいけないな)
そして、採寸させていただき寸法を埋めていこうと思ったのですが…、というか最初から私も予測していましたが、T様のようにオシャレなお客様は、ひとつひとつのサイズにとても敏感なのです。ここですべてのやりとりを書いていたら、かなりの長文になってしまいますので要約させていただきますね!まず、パンツからとりかかったんですが…、
・ シルエットはワイド(バギーパンツのようなイメージ)をご希望でしたが、現在型がないのでかなりお時間をいただいてしまう旨を伝えると、セミフレアかストレートで悩まれるが、最終的に裾口19cmの膝20.5cmのかなり細めのシルエットに落ち着く。
・ ピスP(おしりのポケット)は左側は無くす。
・ ウエストに持ち出しをつけ、なおかつ先はとがらせないで四角くする。(写真はとがった仕様)
次にジャケットです!
・ 胸ポケットと腰ポケットの幅を細くする。
・ ラペルは6.5cm。
・ アームホールから袖口にかけて腕を全体的に細くする。
・ そして!着丈を65cmにされました!もの凄いショート!エレガント!(!?)
とまぁ、こんな感じでまとまりました。このあと、裏地と釦を選んでいただき完了です!そして、ふと時計を見るとたしか4時過ぎくらいだったように記憶しています。いやー、お時間とらせてしまいました。申し訳ないです。再び私が、
『お時間だいじょうぶですか?』すると、
『だいじょぶですよ!』
ほんとかなー。でも、何より申し訳なかったのは、お連れ様(きっと彼女さんと思います)に対してです。3時間以上待たせてしまったわけですから。そんなわけで、お二人には大分お時間をとらせてしまい、少々疲れさせてしまったかもしれません。でも、私はといいますと…
かなり楽しかったです!というか勝手に楽しんでました!楽しい時間をどうもありがとうございました!そして、私は思ったのです。これは単なるオーダースーツじゃない。スペシャルオーダーだと(笑)
さて、みなさん出来上がりが気になると思うのですが、T様からお顔を写さないという条件で写真撮影の許可をいただきましたので、バッチリ載せさせていただこうと思います。お楽しみに!
P.S. T様、そして彼女さん本当にお疲れ様でした。
<前川>